『10宅論』 隈研吾著 トーソー出版 1986年

10宅論―10種類の日本人が住む10種類の住宅 (ちくま文庫)建築家・隈研吾が80年代に書いた住宅論。
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日本の家を“カフェバー派”“ハビタ派”など10のタイプに分けて、それぞれに住む人のタイプを類型化。ワンルーム・マンションはホテルのスタイルを住居に導入したもので、都市の浮遊者というアイデンティティーを象徴するなどという考え方は非常に面白い。全体の雰囲気は80年代のバブリーな雰囲気を持っていて、今見ると鼻白いような部分もあるが、その分析眼は冷徹で鋭い。
特に、書かれた時期はポストモダン全盛期であったため、日本の住宅とモダニズムポストモダンの関係がうまく説明されている。そして、そのモダニズムと絡めて、日本が外国文化への憧れを潜在化させつつあると分析する当時の現在の分析には鋭いものがある。
隈研吾は今はもうポストモダンと決別し、自然に溶け込むような、あってないような建築を作ることに情熱を燃やしているようだが、そのようにして社会が向かって行く先先を読み取る能力がこの本で証明されていると言ってもいいだろう。

そしてまた、団塊の世代(“ハビタ派”)が合理主義的でモダニズムを偏愛するという記述を見て、団塊ジュニアの私は自分の好みがその育った環境にあったのだということを認識させられたりもした。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480023828/hibikoreeiga-22ちくま文庫からの再版)