『落語百選 冬』 麻生芳伸編 ちくま文庫 1999年

落語百選 冬 (ちくま文庫)オリジナルは1975年、三省堂より刊行。さらに、1980年社会思想社から現代教養文庫の一冊として再刊行されている。
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落語はもちろん読むよりもライブで聴いたほうが面白い。私も出来れば寄席に行って、ライブで聴きたいのだけれど、いざ行くとなると貧乏根性で昼の前座から聞いてやろうなんて思ってしまって8時間もこもりっきりになるということもあって、そうしょっちゅうも行けない。
とうわけで、落語本を読む。落語の噺を収録した本当のは結構あるけれど、それには大きく分けて2つある。ひとつは特定の高座を収録して文字化したもの、これは縁者なども明らかにしてあって、それぞれの噺家のアレンジが楽しめる。もうひとつは一般的な噺を収録したもの。定番の噺というのはある程度までは型が決まっているから、これを落語事典という形で収録する。
読んでいて面白いのは断然に前者である。とくにひとりの噺家で一冊のの本になっていると、なおよい。ちくま文庫では、志ん生志ん朝、円生などの落語集が発売されていて、これは解説も細かくてとても面白い。
今回読んだ『落語百選』は基本的には特定の高座を収録したものであるが、様々な縁者のものが集められたもので、誰の噺かが明らかになっていない場合もある。そのせいか、それぞれの噺家の個性よりは、噺自体を収録することに重きが置かれているように思える。
しかし、ただそっけなく事典的に噺を集めたものよりはライブ感があって面白い。この本を読みながら、取り上げられている噺について、記憶に残っている高座があれば、そのときの記憶が蘇ってきて、頭の中で映像として楽しむことが出来た。特に、「芝浜」は去年の年末あたりに聞いた柳家さん喬の高座を思い出しながら、楽しく読むことが出来た。そのときのさん喬の「芝浜」はこの本に収められているもの(噺家は特定されていない)よりもはるかに長い噺にアレンジされており、聞き応えがあったのを思い出す。
噺家個人の本は寄席で聞いたことがあるかどうかとは関係なく楽しめるけれど、辞典的な本は聞いたことのある話のほうがはるかに面白く読むことが出来るということがわかった。この本にも聞いたことのない噺が多く、寄席に行きたい気持ちがとにかく高まる。
収録されている主な噺、
牛ほめ、弥次郎、火焔太鼓、二番煎じ、火事息子、文七元結、芝浜、千早振る、薮入り、初天神、妾馬、粗忽長屋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480034544/hibikoreeiga-22

2/20の「ほぼ日刊 日々是映画」
ジャック・タチ監督『ぼくの伯父さんの休暇』
http://cinema-today.net/0502/20p.html