『グッドバイ・ポストモダン』 隈研吾著 鹿島出版会 1989年

グッドバイ・ポストモダン―11人のアメリカ建築家古本屋で購入
建築家・隈研吾コロンビア大学に客員研究員として赴任していた一年間にアメリカの名だたる建築家たちにしたインタビューをまとめたインタビュー集。87年を80年代の終わり、ポストモダンの終わりと考え、その時代を振り返るという形で構成している。
隈研吾ポストモダンが幕を閉じたという1987年、私はまだ中学生だった。だから私にとってポストモダンなどというモノはそもそも夢に過ぎない。ようやく物心ついて、建築を眺めるようになったとき、その目に写ったポストモダンの建築群に私は醜悪さしか感じなかった。
私はモダニズムに郷愁を覚え、ポストモダンを嫌悪した。この本に登場する建築の様々な“イズム”の意味はよく知らないけれど、私はそれらの“イズム”の羅列に不毛さを感じた。それはあまりに皮相的で、彼らがスターになりえた時代があったということをなかなか信じることが出来ない。
この本にはアンチ・イデオロギーとかノン・イデオロギーとかいう言葉が登場するが、その言葉が何であれ、問題なのは彼らにイデオロギー以前の哲学がなかったということだ。哲学とはコミュニケーションである。建築と人、人と人、建築と自然、人と自然、建築と歴史、そのようなコミュニケーションという哲学を欠いて、建築と買い手しか存在しなかったのがポストモダンであったのだ。
隈研吾は哲学を求めて、ポストモダンに別れを告げる。隈研吾は1991年にM2というポストモダン然の建物を建てる。この建物も私は醜悪だと感じていたが、今は、その上部に聳え立つオブジェが古代ギリシャの柱頭を模っていることが隈研吾なりのポストモダンに対する反抗なのではないかと感じる。歴史とのコミュニケーションを忘れたポストモダンに対する“アンチ”の表現なのではないかと。
そして彼は今、建築と自然のコミュニケーションという哲学を追求している。私はまだまだモダニズムへの郷愁を捨てきれないが、彼の建築が語りかける哲学に懸命に耳を傾けようとしている。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4306042596/hibikoreeiga-22

4/28の「ほぼ日刊 日々是映画」
ザック・スナイダー監督『ドーン・オブ・ザ・デッド
出演:サラ・ポーリー、ヴィング・レームズ
http://www.cinema-today.net/0504/28p.html