『落語三百年 明治・大正の巻』 小島貞二著 毎日新聞社 1979年

*オリジナルは1966年
古本屋で購入
三巻本の『落語三百年』の二巻目。明治から大正期の落語会の話と、その頃の落語の速記を載せている。この頃になると、速記も比較的多く残り、部分的にはレコードなんかもあるので、実際に当時の様子がうかがい知れて面白い。思えば100年も前の話、しかし今に通じる伝統がある。
この本の中でまず面白かったのは快楽亭ブラックの話。現在の快楽亭ブラックは2代目で、この本に登場するのはこの本に登場するのは初代。オーストラリア生まれ、日本育ちのイギリス人で、父親は日本に新聞を作りにやってきた。講談から落語家となり、快楽亭ブラックと名乗る。日本で始めてのレコードというものをつくった人でもあるらしく、そのような人が明治時代に落語家をやっていたというのが面白い。
あとは、今も話されているような噺が異なった形で話されていたことを書いている部分が面白い。この本に登場する噺家たちのことはもちろんまったく知らないが、「花色木綿」や「野ざらし」という噺の今との違いから、その時代の空気のようなものを感じることが出来る。

そんな時代の空気を感じながら、落語の世界は今よりもこの本に書かれている明治・大正のほうが自由であったように思う。今は大衆芸能ではあるけれど、伝統というものにどこかで縛られている感じがあって、“何代目”という看板も重くのしかかるし、正当な落語を演じなければならないという空気があるように思える。しかしこの本を読むとこの当時の落語家は歌ったり踊ったり鳴り物を鳴らしたりと自由奔放、もちろんそのような噺家はお偉方には煙たがられたけれど、大衆には人気があった。いまはそんな奔放な落語家はなかなか出てこない(川柳川柳くらい?)。
その自由奔放な発想から新しいものが生まれてくるということを考えると、その頃のほうが落語には生命力があった。新しいものを新たな伝統として取り込んで行く。そんな鷹揚さが今の落語には必要なのかもしれない。

4/20の「ほぼ日刊 日々是映画」
周防正行監督『ファンシイダンス』
出演:本木雅弘鈴木保奈美田口浩正、大沢健、竹中直人


突然ですが一句

心根は うきうきとして 竹の秋