外から日本を見る『敗北を抱きしめて』

戦後60年を考え、靖国神社へも行った締めくくりという感じで読んだこの本。日本研究者のジョン・ダワーが大衆を研究することによって得た戦争と戦後の日本人の新たな一面をわかりやすく描いている。
ふーんと思うことも多いし、勉強させられることも多い。特に天皇にまつわる記述については外国人であるだけにためらいも何もなく書いてあり、明解で気持ちがいい。日本人が書くとやはりどこかで「天皇の事は…」という躊躇が働いてしまうのではないか。この本ではそのような戦後の日本の不健全さも説明されているように思える。そのように思ったのはダワーのこんな記述だ。少し長いが引用してみる。
――この観点から見ると、この[GHQの]「上からの改革」のひとつの遺産は、権力を受容するという社会的態度を生き延びさせたことだったといえるだろう。すなわち、政治的・社会的権力に対する集団的諦念の強化、普通の人には事の成り行きを左右することなど出来ないのだという意識の強化である。
もちろん、天皇と戦争責任の問題を考えることも重要だ。しかし、戦争と戦後の連合軍による占領がもたらしたそのような「遺産」について考えることも、現代においては非常に重要なことなのではないかと思う。
今度の自民党の圧勝にもどこか集団的諦念のにおいを感じる。どうせ自分で事の成り行きを左右できないのなら、勝ち馬に乗って行こう、そんな人々の姿勢が自民党の圧勝につながったのではないか。民主党政策論争をするといいながら、結局はいかに自分たちが勝ち馬になるのかという権謀術策に溺れていたのではないか。全てが選挙の勝ち負けのために動く社会、そんな社会になったら権力者の暴走はもう止まらなくなってしまうのではないだろうか。