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「桜の森の満開の下」 坂口安吾著 1947年 『坂口安吾全集5』(ちくま文庫)所収

桜の季節ということで、急に読みたくなって、本棚の奥のほうに眠っていたのを引っ張り出してきました。 「桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になります」という背筋がぞくっとするような表現に桜が持つ狂気の芽を感じる。それはつまり、人は桜の放…

『落語三百年 江戸の巻』 小島貞二著 毎日新聞社 1979年

*オリジナルは1966年 古本屋で購入 現代に通じる落語文化が興ったとされる江戸は天保から昭和までの落語の歴史を、代表的な演目によって綴った3巻本の一冊目。「明治・大正の巻」「昭和の巻」と続く。この江戸の巻では天保年間の寄席に立ち寄ったというイ…

『順列都市』 グレッグ・イーガン著 ハヤカワ文庫 1999年

2045年のオーストラリア、ポール・ダラムは自分の脳を完全にシュミレートした<コピー>がなぜすぐにその世界から抜け出そうとするのかを実験によって観察していた。2050年、同じくオーストラリア、マリア・デルカは自然界をモデル化したオートヴァースで分…

『溝口健二の世界』 佐藤忠男著 筑摩書房 1982年

古本屋で購入 佐藤忠男が日本映画の巨匠、溝口健二について書いた評伝。1章から10章までは時系列を追って、溝口の生涯と作品について書き、最後の3章で総論的な批評を書いている。溝口の人生がどのように作品の創作に影響を及ぼしたかという分析が精査で面白…

『万華鏡』 レイ・ブラッドベリ著 サンリオSF文庫 1978年

古本屋で購入 1965年にブラッドベリの自選短編集としてとして出版された“The Vintage Bradbury”の翻訳。名作の誉れ高い「たんぽぽのお酒」や「刺青の男」「こびと」他全23編。 もともと短編集として書かれたものではないので、書かれた時期もテーマもバラバ…

『落語文化史 笑いの世界に遊ぶ』 朝日新聞社編 朝日新聞社 1986年

古本屋で購入 シリーズ[文化]の一冊として、朝日新聞社が出したムック。関東には落語家や江戸の風景の写真があり、落語好き文化人の小文が載ってたりして、その後で故柳家小さんと弟子の小三冶の対談が載っている。それ以外にも有名な話の要約、落語の歴史…

『魔術師(イリュージョニスト)』 ジェフリー・ディーヴァー著 文芸春秋社 2004年

「ボーン・コレクター」に始まるジェフリー・ディーヴァーの代表作である科学捜査官リンカーン・ライム・シリーズの第5作。リンカーン・ライム・シリーズは脊髄を損傷し四肢麻痺となった元NY市警科学捜査部長リンカーン・ライムが手足となる女性捜査官ア…

『月曜日は土曜日に始まる―若い科学者のための物語』 アルカージ&ボリス・ストルガツキイ著 群像社 1998年

プログラマーである主人公は友人と落ち合うためレニングラードから地方都市へ向う。その途中で拾った二人の男に紹介された宿泊場所に落ち着いた主人公は、そこで現実とも幻想ともつかない不思議な体験をする。そして、いつのまにやらそこに現れた人たちのペ…

『リリー&ナンシーの小さなスナック』 リリー・フランキー、ナンシー関著 文芸春秋社 2002年

古本屋で購入 雑誌クレアに連載されていたリリー・フランキーとナンシー関の対談をまとめた単行本。連載期間は約2年で、ナンシー関の急逝によって連載中止となってしまった。内容はなんともゆる〜い内容の世間話で、ナンシー関の毒舌にリリー・フランキーが…

『落語新幹線』 三遊亭圓歌著 桃源社 1975年

古本屋で購入 *amazon.co.jpに情報なし 現・落語協会会長、三代目三遊亭圓歌が40代の頃に噺を集めた落語集。副題が「三代目三遊亭圓歌独演会」となっているとおり、11の演目と間に挟まれた8編の短いエッセイで、この当時の圓歌のすべてを込めたとでもいうよ…

『スピリット・リング』 ロイス・マクマスター・ビジョルド著 創元推理文庫 2001年

古本屋で購入 「マイルズ・ネイスミス」シリーズで有名なロイス・マクマスター・ビジョルド作のファンタジー。 物語の舞台は、中世のヨーロッパ、金細工師で魔法使いのプロスペロ・ベネフォルテの娘フィアメッタは女の子であることを理由に魔法使いになるこ…

『現代落語論 笑わないで下さい』立川談志著 三一書房 1965年

古本屋で購入立川談志が29歳のときに書いた初のエッセイ。落語が大好きだった子供時代から、真打になるまでの自伝的な記述と、落語について思うことをとりとめなく書いたもの。どのような落語が面白いと思うのかという実例を交えながら書いているので、読み…

本読みのバイブル『華氏四五一度』

これは本読みのバイブルである! こんな風に読書日記を書くようになって、早々にこんな本に出会ったのはとてもうれしいことだ。トリュフォーの映画『華氏451』はすでに見ていて、その時は今ひとつよくわからない印象だったのだけれど、それもそのはず、この…

『落語百選 冬』 麻生芳伸編 ちくま文庫 1999年

オリジナルは1975年、三省堂より刊行。さらに、1980年社会思想社から現代教養文庫の一冊として再刊行されている。 古本屋で購入落語はもちろん読むよりもライブで聴いたほうが面白い。私も出来れば寄席に行って、ライブで聴きたいのだけれど、いざ行くとなる…

『映画は死んだ』 内田樹・松下正己著 いなほ書房 2003年(新版:オリジナルは1999年)

図書館で借りる内田樹さんの専門はフランス思想らしいが、私は思想系の本は読んだことがない。読んだのは『映画の構造分析』と『ためらいの倫理学』。『映画の構造分析』はジジェクがやっていることをよりわかりやすくやり、よりためにならなくなっているの…

『ダブル・スター』 ロバート・A・ハインライン著 創元SF文庫 1994年

古本屋で購入 1964年に『太陽系帝国の危機』という題で同文庫から発売されていた作品の改題・新訳版。売れない役者であるロレンゾが見知らぬスペースマンにその演技力を買われ、あれよあれよという間に火星へと向かう宇宙船に… SFの巨匠の一人ハインライン…

『去年を待ちながら』 フィリップ・K・ディック著 創元SF文庫 1989年

ディックのタイムスリップもののSF。 古本屋で購入 ディックの小説を読むといつも気分が滅入るが、この小説もそんな小説だ。舞台は2055年、地球は恒星間戦争に巻き込まれている。人工臓器移植医のエリックが専属の医者であるヴァージル・アッカーマンのお…

『10宅論』 隈研吾著 トーソー出版 1986年

建築家・隈研吾が80年代に書いた住宅論。 古本屋で購入日本の家を“カフェバー派”“ハビタ派”など10のタイプに分けて、それぞれに住む人のタイプを類型化。ワンルーム・マンションはホテルのスタイルを住居に導入したもので、都市の浮遊者というアイデンティテ…